プロジェクトスタディ

港まちに息づくアートプロジェクトと小規模多機能型拠点(名古屋)


まちにしみ出し、はみ出していく活動

観光・レジャー目的で訪問する方もいる名古屋港の展望室での展示や、水族館内でのコンサート、ふ頭臨港緑園の屋外空間活用によるパフォーマンスなどは、これを偶然目にする方もかなりの数となる、まちへはみ出していく活動だと言える。演奏家やダンサーがまちを移動しながら行うツアーパフォーマンス、車両通行止めにした道路使用を伴うマーケット、DJブースやライブステージを行うブロックパーティーなどの例もある。

ブロックパーティーについては、ゆかりのあるアーティストらが参加することはもちろん、後述する「港まち手芸部」もマーケットに参加するなど、日常的な活動のハレの場にもなった。パフォーマンスは韓国伝統舞踊団による路上での演舞、DJ、民謡、ラップ、ドラァグクイーン、クラシック音楽、ゴスペルと、多様なジャンルの表現が集まり、フィナーレには港まちで盛んな盆踊りを地元の踊り子を中心に行った。マーケットは港まち内外から35店が参加。地域のお祭りを現代的にアップデートさせた独自性の高い内容となり、そこでは新たな出会いも生まれたはずだ。

実施にあたっては、警察への道路使用の許可申請を行い適法としたことはもちろん、商店街や近隣住民の挨拶まわりなども行うなどのリスクマネジメントに努めた。

青崎伸孝《まちで聞かれた会話のノート 港まち》ほか

青崎伸孝《まちで聞かれた会話のノート 港まち》ほか(アッセンブリッジ2019ドキュメントより)
約2ヶ月の滞在中に身の回りの出来事を観察、記述により記録するなどしながら作品を制作。名古屋港ポートビル展望室ほか5ヶ所で展示を行った。(アッセンブリッジ・ナゴヤ2019)

ララ・カルト《イルカとラララ♪》

ララ・カルト《イルカとラララ♪》(アッセンブリッジ2016ドキュメントより)
名古屋港水族館内で行った、クラリネットカルテットの生演奏(アッセンブリッジ・ヤゴヤ2016)

折元立身《26人の港まちのおばあさんのランチ》パフォーマンス

折元立身《26人の港まちのおばあさんのランチ》パフォーマンス(アッセンブリッジ2019ドキュメントより)
世界各地で行われている、その土地の女性たちを招待しランチを振る舞うパフォーマンスを名古屋港ガーデンふ頭臨港緑園で実施(アッセンブリッジ・ナゴヤ2019)

みなと音めぐり

みなと音めぐり(アッセンブリッジ2017ドキュメントより)
音楽家とともに港まちを巡り歩きながら、まちの音に耳を傾けるツアー型パフォーマンス。名古屋港水族館南側緑地、旧・名古屋税関港寮、港まちポットラックビル2F、UCOほか、まちなか各所を巡った。(アッセンブリッジ・ナゴヤ2017)
出演|テライショウタ、厚海義朗、角銅真実、池間由布子 音源・映像出演|テニスコーツ 照明|河村陽介

Aokid《OVER THE RAIN boy》

ダンサー/アーティストのAokidが、港まちの複数の場所で行ったパフォーマンス。築地公設市場、名古屋港水族館南側緑地、ポートブリッジ、UCOを巡りながら行った。(アッセンブリッジ・ナゴヤ2018)

港まちブロックパーティー

港まちポットラックビル周辺の路上や複数の施設、空き店舗や駐車場を活用して、ブロック(街区)の住民が集まって行う地域のお祝いや祭りを意味するブロックパーティーを行った。(アッセンブリッジ・ナゴヤ2019)
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まちの日常にじわじわ広がる活動

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